─本作への出演が決まった時の率直なお気持ちをお聞かせください。
神田●私自身、『宇宙戦艦ヤマト』という作品はもちろん知っていたので、最初はそれが新しく作られるということにすごく驚きました。役をいただけて嬉しいという気持ちは大前提としてあるのですが、作品の中で重要な役割を担うテレサというキャラクターを私が演じるということに、最初はとても恐縮しました。初めて『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』を観させていただいた時に、テレサは非常に印象に残るキャラクターだったので、責任がすごく重大だなと思いました。
─本作のモチーフとなっている『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』をご覧になられた感想は?
神田●作品の中で使われている用語などが難しかったこともあって、きちんと理解するために何度か観直しました。最初は戦艦だったり、ヤマトの戦闘シーンだったり、そういったものは男の人のものだというイメージがあったんです。でも、実際に緊迫した場面を観ていると、そこにちゃんと人間ドラマがあるので、手に汗握る感覚を味わえて、女性の私でもとても楽しめました。
─以前から「ヤマト」をご存知だったということですが、それはやはり主題歌からですか?
神田●そうですね、必ず誰かがカラオケで熱唱していましたね(笑)。今回のテレサ役が決まった話を事務所内ですると、「あのヤマトに!」って、みんながすごく喜んでくれるんです。やっぱりそれだけ「ヤマト」という作品は知られていて、かつ世代だった人も私の周りには多いので、世の中の方たちにとってもきっとそうなんだろうなと思います。
─本作の脚本を読まれ、アフレコに臨まれたお気持ちをお聞かせください。
神田●今までに何度かアニメ作品には参加させていただいていたのですが、その時は別録りだったこともあり、まだ他の声優の方たちと一緒に収録したことがなかったんです。でも、本作では錚々たるキャストのみなさんと同じ現場で、同じタイミングでのアフレコだったので、そういう意味では、もしかしたらこれが私の本当の意味での声優デビューになるんじゃないのかなと思っています。足を引っ張ってはいけないという気持ちがある中、今回の台本の内容が冒頭で数行喋って消えていくというものだったので、こんな冒頭で躓く訳にはいかないという想いがありましたね(笑)。役作りをするにしても役が壮大すぎて、どんな風に作ろうかと、アフレコの前日からとにかく緊張していました。
─他のキャストの方たちと一緒に収録するアフレコはいかがでしたか?
神田●私が通っていた養成所がプログラムの中に実技を多く取り入れるところだったので、そこで基本的なことは勉強していました。それがなかったら本当にどうしていいか分からなかったと思います。初回のアフレコは顔合わせも兼ねているので、スタッフさんやキャストさんの人数が多くて。その中で、私は一番の新人みたいなものなので本当に紙くらいの薄さになりたいと思いながら、できる限り肩幅を狭めて座っていましたね(笑)。
─アフレコ現場の雰囲気はいかがでしたか?
神田●シリーズものですし、前作の『宇宙戦艦ヤマト2199』から出演されていたキャストの方たちがたくさんいらっしゃったので、ファミリー感があってとても和やかでした。ガチガチに緊張するのではなく、私もこのファミリーの一員になることが最終的な目標だなと思いました。
─アフレコで印象に残っているエピソードは何かありますか?
神田●今までお会いしたことのある方が、今回の現場では古代役の小野(大輔)さんしかいらっしゃらなかったんです。以前、声優アワード(2015年3月に開催された第九回の授賞式)で恐縮していた私に、初めてお会いした小野さんが優しく話しかけてくださったんです。お話をした最後に「神田さん、次は現場で会いましょうね」という言葉をかけてくださったことが、すごく嬉しくてずっと心に残っていました。「はい、頑張ってそこまで行きますね」とお答えしてから、やっと小野さんと現場でお会いすることができたので本当に嬉しかったですね。その感謝の想いをいつかお伝えできればなと思っています。
─テレサという本作の象徴的なキャラクターを演じるに当たり、羽原監督や福井さん、音響監督の吉田さんからアドバイスはありましたか? また、演じる上で心掛けたことなどがあればお聞かせください。
神田●スタッフさんからは「テレサは宇宙全体を見守っている女神様みたいな存在なので、喋り出した時に普通の人間とは違う、ということがすぐに分かるような神々しさを持って喋ってください」と言われました。その情報をもとに役作りをして、彼女のセリフが祈りのメッセージのような印象を受けたので、テストの時に切実な感じで演じてみたんですけど、そうしたら温度感が人間に近くなってしまったんです。もっと淡々と抑えた感じにしてくださいとのことだったので、私にとっては引き算のお芝居でしたね。無感情ではないし、一本芯の通った強さみたいなものはあるんです。でも、それが人間っぽく聞こえてしまうとどこか押し付けがましくて、近しい感じがしてしまうのかなと。特別なところにいるっていう感覚を出すためには、抑揚というよりも説得力が大事だと解釈して演じさせていただきました。
─その難しい役を実際に演じられてみて、いかがでしたか?
神田●私一人のために他のキャストのみなさんをそんなに待たせる訳にはいかないというのと、逆に自分の中で萎縮してしまうとさらに時間がかかってしまうと思ったので、とにかく要求されたことを100%理解して即座に返すことに集中していましたね。
─今後の展開が気になるところですが、神田さんご自身が期待することはありますか?
神田●自分が生まれる前からある「ヤマト」という偉大な作品には、根強いファンが本当に多くいらっしゃるので、その方たちに満足して頂ける結末になればと個人的には思っています。あとは、そういった既存のファンの方だけではなくて、私よりも下の世代や「ヤマト」を初めて観るという方たちのためにも入り口をもっと広くしたいなと思います。とにかく一人でも多くの方に感動していただける、そのお力添えができればと考えています。
─ファンの方へメッセージをお願いします。
神田●テレサは「ヤマト」という作品において、キーでありアイコン的な存在でもあるので、そういう責任感は継いでいきたいという想いは高まっています。シリーズが終わる時に、みなさんの中に新しいテレサとして自然になっていられるように頑張っていきますので、応援宜しくお願いします。
●神田沙也加(かんださやか)
東京都出身。ファンティック所属。女優。舞台を中心にキャリアを積み、数多くのミュージカルに出演。透明感ある声と演技力には定評がある。声優としても様々な作品に出演し、主な出演作に『アナと雪の女王』吹替版のアナ役などがある。