宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち

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イベントレポート●第五章「煉獄篇」初日舞台挨拶(スタッフ)レポート

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ご存知のとおり『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』では、東京近郊以外の劇場でも毎章舞台挨拶を開催している。第五章では、6月1日(金)、2日(土)に九州の3都市(博多:T・ジョイ博多、北九州:T・ジョイリバーウォーク北九州、熊本:TOHOシネマズ光の森)へ伺った。登壇者は、シリーズ構成の福井晴敏さん(博多・北九州・熊本)。桐生美影役の中村繪里子さん(北九州・熊本)。そして、北九州市に高校まで住んでいたという製作総指揮の西﨑彰司さん(博多・北九州)。今回のレポートでは、上映記念舞台挨拶では初の登壇となる西﨑彰司さんとのやりとりをピックアップしお送りする。

 製作総指揮のお仕事

西﨑:「製作総指揮」に定義はないと思うんです。ただ、僕が思う役割としては、ある企画を立案して、その企画=作品に伴う予算を決め調達する。次がもっとも重要なんですが、いわゆるスタッフィングですね。まずは脚本。それから監督。他にも作画ディレクターなど、主要スタッフを起用する。この才脳をお持ちである方々を探して(お仕事を)受諾してもらうことが、最大かつ重要な仕事です。次は、全体を見渡して制作スケジュールをある程度管理する。そして、必ず納期に間に合わせデータを納品する。……ということだと思うんです。

─お仕事のひとつに上げていただいたスタッフィング。まさに福井さんの雇用主なわけですね。

福井:そうです。「この人がダメ」と言ったことはダメですから。

中村:ダメと言われたことは何かあるんですか?

福井:幸いにしてまだありません。

─では、今日もし失言をしたら……。

福井:だから緊張しているんじゃないですか(笑)。

 福井さんの起用と、西﨑さんの印象

─福井さんを起用された切っ掛けは?

西﨑:福井さんのことは以前から注目をしていまして、特に『ガンダムUC』は大ヒットしていて、羨しいなと思っていました。そこで関係者を通じて紹介していただいてお会いすることになりました。1回目は結構……大作家なのでもったいをつけられましてね(笑)。とりあえず話は承ったみたいな。

福井:そんな偉そうなことを言った覚えはまったくないんですけど(笑)。

西﨑:ちょっとは盛らないとおもしろくないので(笑)。それで2回目にお会いした時に快く受けていただきました。僕の個人的な意見ですけど、映像作品というのはやはり物語が一番大切です。これがある程度感動をよぶものでないと作品の行方は非常にあやふやになってしまう。我々もそこで勝負できない。お金を集めた責任、リクープしなくてはならない責任がありますので。本当に凄い奴に出逢って僕は良かったと思います。

─ベタボメですね。

福井:今、だらだらと汗が出ています(笑)

─福井さんは初めて西﨑さんにお会いした時、どんな印象でしたか?

福井:この仕事をしていると、大勢の人たちにお会いします。しかし、出版社であったり映像制作作会社であっても、やはり日本の企業。サラリーマン社会の中である種出世してきた人たちは、その会社ごとに似たような色が出てくるんです。けどこの社長(西﨑さん)の場合は、そんな経緯をまったく経ないで来られた方じゃないですか。いうなれば自分の腕一本でここまで来たタイプなので、それは緊張しました。下手なことは言えないなって。企業家としても、経済原理を満たしていることだけに価値を見いだしているタイプではないので……。言わば面倒臭いタイプです(笑)。ある種、自分の美学と信念と哲学みたいなものがあってそれをある程度満たさないとOKを出さない。そこを見極めないといけないなというのがありました。

 講談師のようなプレゼン

西﨑:福井さんから企画書をいただいた時、福井さんと我々スタッフ10名くらいでお会いすることになったんです。その時、福井さんが企画書を机に置いてジェスチャーを加えてトークで僕に説明するんです。そうすると、凄い臨場感というか、「この人は違う仕事をした方がいいんじゃないかな」くらいにお話が上手くて(笑)。凄く感動して「よし、やりましょう!」と。

福井:今、思い出しました。バンダイナムコアーツの会議室でやったアレですね。

西﨑:そうです。

福井:企画会義とかやっていると空気が滞留する気配というのがあるわけです。みんな「どうなのかな」と決め手がいまいち見えない。羽原監督もいましたが「う〜ん。でも、今ひとつ絵が見えない」みたいな顔をしていたので、「よ〜し、それなら見せてやろう」と(笑)。第1話の最初、白色彗星のところからみなさんの前でひとり芝居を。「こちらから地球軍の艦がワープアウト。こちらからガミラス艦隊が来た。両者は戦うのか。いや戦わない。互いに方向展開して同じ方向へ進み出した。そしてそこにテロップ〈地球ガミラス連合艦隊〉が出て……」というような形で、セリフだけでなく艦の動きを手で「ぎゅーん」と。最後にヤマトが主砲を撃つというところまで全部やりましたね。

西﨑:効果音まで付いていましたから。

中村:講談師ですね。

西﨑:あれを録画とかされて後で再生とかYouTubeとかに上げられたら生きていけないレベルです(笑)。

西﨑:その場にいた関係者、10人ほどですが、最後はスタンディングオベーションですよ(笑)。某大手代理店のプレゼンより10倍凄いですね。

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 『2202』の感想と手応え

西﨑:福井さんにもお話させてもらったんですが、まずは『さらば』を観た人たちに是非、また観てほしい。そして、あの頃観てくれた方の多くが中学生前後だったと思うんです。私はそういう今の若い子にもこの作品を観てほしい。それで福井さんに注文したのは、『さらば』ではありますけど、視点を変えて新しい物語・ドラマを作って欲しい。それが見事に今映像になっていると思っています。

─せっかくなので、第五章の感想を教えていただけますか。

西﨑:佳境です。いよいよ色んなキャラクターが色んな行動、色んな心持ちをしながら進んでいきます。艦隊戦も上手く見せられたかなと思います。加藤の子供を選ぶか、ヤマトを地球を選ぶかという選択で悩む姿、この心情ドラマが福井さんの真骨頂だと思います。他には、ガトランティスで赤子を抱える部下を見てズォーダーが「あの者たちは何故笑みを浮かべているのだ」と言うシーン。僕はここが印象に残っていまして、愛を謳いあげる『2202』のドラマを凝縮したシーンではないかと思いました。

─西﨑さんが感じている『2202』シリーズの手応えを教えてください。

西﨑:章を重ねる毎に、僕が感心を示さないといけない数字は徐々に上がってきていまして、この先もっと期待どおりの数字を得られると思います。

福井:私が参加したアニメはいつもそうなんですけど、今のアニメと比べると「地味なんじゃないか」「重たいんじゃないか」というルックで始まるので距離を持たれがちなんですが、話数を重ねるごとに徐々に上がり始め、ある瞬間にボーンと。なのでその瞬間というのをこの秋のテレビ放送に期待しています。

 エンディング主題歌について

─もうひとつ。西﨑さんのお仕事として、エンディング主題歌をプロデュースされていると伺っています。

西﨑:作品の中で音楽は重要な要素のひとつです。決意とか怒りとか、感情の増幅を担うとても影響のあるものです。劇中の音楽は宮川彬良さんにお任せしていますので、残るはエンディング。エンディングは、みなさんが映画を見終わってその余韻を、気持ちを増幅したり胸に刻んだりするパートとしてとても重要です。僕は、音楽はメロディがもっとも大切だと思っていて、そこに有名無名を問わず歌唱力のある方が歌を乗せていく。そうすればみんなが気持ちいいサウンドが生まれるんじゃないかと考えています。今回は作曲チームにも恵まれました。S.E.N.S. Projectというチームですが、彼らは非常に情熱があって、巧みな音楽ワークで作品に関わってくれています。

福井:最近はリズム主体の曲も多いですが、S.E.N.S.の曲はサビを2回聴くと覚えられる。耳に残る。これはとても大事なことで、毎回助けられています。ちなみに第五章のエンディングは、このひどい終わり方をどう慰めようかというと「子守唄がいいんじゃないか」というテーマで作っていただきました。少しでも落ち着いてもらわないとね。

最後に、T・ジョイ博多で行った舞台挨拶の最後に挨拶をされた、福井さんの言葉をまとめとして記載する。

福井:この10年の中で一番長い30分でした(笑)。社長に以前良い話を伺ったのでそれを是非とお願いしていたんですが、すっかり忘れられていたので代わりに話します。「人間この歳になると金でもないし権力でもない。本当に愛するものが近くに居るかどうかだ」。その切実な気持ちが、この『2202』の物語の根本にはあると思います。今日は、こういう人が一番後ろに控えて作っているんだと、みなさんに知ってもらえて良かったです。

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