▲宮川彬良
10月14日(月・祝)、2017年から2019年にかけて劇場上映・テレビ放送された『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』初のコンサートが行われた。会場は渋谷、Bunkamuraオーチャードホール。数多くのクラシック音楽やバレエの公演で知られるこの会場で、どのようなコンサートが行われるのか。多くのファンが注目していた本公演は、「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの音楽を親子二代で手掛けてきた宮川彬良と縁のあるミュージシャンたち、そしてエンディング主題歌を彩ったシンガーが共演し、2時間を越える豪華な内容となった。
開幕のベルが鳴り、暗がりの中で「白色彗星メインテーマ」をピアノとコントラバスの重低音が奏で始める。そこに チェロ、バイオリン、エレキギターが加わりより不気味さを醸しだす。ファンの間ではパイプオルガンの音色で聴き馴れているメロディが今までにないアレンジで演奏される。間を置かず、S.E.N.S. Projectのメンバーとコーラスが演奏に加わり「月の鏡」(第二章エンディング主題歌)を演奏。舞台後方に降りてきたスクリーンに第二章エンディングで使われた映像が流れる。この2つのメロディを合わせたものが、本公演のオーバーチュア(序曲)。この曲が象徴するように、今回は『宇宙戦艦ヤマト2202』のエンディング主題歌と、この日のためにアレンジされたBGMを楽しんでもらおうというコンサートなのだ。
オーバーチュアの演奏が終わると司会の中村繪里子が登壇し、オーバーチュアを作曲・アレンジした宮川彬良と共に開幕の挨拶。前半となるエンディング主題歌パートがスタートした。
1曲目は、ありましのが歌う「君、ヒトヒラ」(第三章エンディング主題歌)。彼女は続けて、歌声とピアノをしっとりと聴かせる新しいアレンジの「ようらんか」(第五章エンディング主題歌)も披露した。S.E.N.S. Projectに参加するギタリスト・武沢侑昴とのトークの後は、星野裕矢の「CRIMSON RED」(第四章エンディング主題歌)、山寺宏一の「大いなる和」(第六章エンディング主題歌)が披露された。
▲山寺宏一
後半のBGMアレンジパートで、宮川彬良が再登壇。オリジナルでは大編成で演奏されることが多かった楽曲を、今回の編成(ピアノ、ギター、コントラバス、パーカッション、バイオリン、チェロ、サックス、コーラス)でどう楽しんでもらえるかを考えた、特別アレンジで演奏された。BGMアレンジとして演奏されたのは9曲。アレンジにより個々のミュージシャンが発する音が強調され、映像と共にある劇伴ではなく、音楽として独立することで楽しみ方はより広がる。次はどんなアレンジなのか、オリジナル曲を知っていても予想がつかない新鮮でスリリングな演奏となった。
その中でも「白色彗星・旅人のテーマ」(オリジナル「白色彗星メインテーマ」)は、宮川独自の楽曲への解釈も興味深い。オリジナルではパイプオルガンの音に引っ張られてバッハ的と感じるが、メロディラインだけ抜き出すと、どこか移動型民族である“ロマの旅人”たちが生み出した民族音楽に似ているという。作品の中で宇宙を移動し続ける“白色彗星”を“ロマの旅人”になぞらえ、民族音楽にも通じる全く新しいアレンジが披露された。
また、トークの流れから宮川から出演者への無茶振り…まさにサプライズのお願いを受けて、中村繪里子は「美しき音楽の大海を渡る」(オリジナル「美しき大海を渡る」)にフルート演奏で参加。さらに、山寺宏一が「大いなる愛」にスキャットで参加し、圧巻の歌声に会場は盛大な拍手に包まれた。
▲(左)平原まこと、(右)中村繪里子
コンサートを締める曲には、『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』のエンディング主題歌「Great Harmony ~for yamato2199」を平原綾香が歌い上げた。この楽曲を生で歌うのは「ヤマト」のイベントとしてはもちろんのこと、平原にとっても初。トークでは、サックスとして参加していた父親の平原まことも紹介され、かつて「宮川組」のメンバーとして宮川泰と共に「ヤマト」の楽曲を演奏していたこと、そこに学生だった平原綾香も聴きにいっていたことなど、宮川家だけでなく、平原家もまた「ヤマト」と深い縁があるエピソードが話された。
▲平原綾香
その後、福井晴敏より最新作『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』の新情報も発表。最後に、全ての出演者と会場が一体となり「宇宙戦艦ヤマト2202」の主題歌を大合唱して、コンサートは閉幕した。
第1作の『宇宙戦艦ヤマト』放映から45年。新たなヤマトサウンドを多くの人たちと共に楽しめた一夜になったのではないだろうか。