─『2199』のあのラストから、ほぼ4年ぶり。久々にデスラーを演じられた感想を教えてください。
山寺●第四章のポスターに「久しぶりだねヤマトの諸君──。」と書いてありますが、まさにその気分でした。『2199』では人数も多くヤマト側とガミラス側で別けないとスタジオに入れないということや、別録り等もありみなさんとなかなか一緒に録る機会がなかったんですが、今回『2202』第三章のラストで初めてヤマトクルー(乗組員)の前でアフレコをしました。「感謝の極み」という一言でしたが緊張しましたね。
─第三章は本当に最後の一言でした。ということは待ち時間はかなり長かったのでは?
山寺●アフレコは1話毎に収録していますので約30分ですが、僕としてはこれまで『2202』にまったく関わっていませんでしたのでみなさんから色々伺い、楽しく勉強しながら待っていた感じです。妻(田中理恵さん)がずっと山本玲役で出ているので大体のことは聞いていましたが、実際にはアニメ本篇を観ているわけではなかったので「なぜ? どういうこと?」みたいな(笑)。
『宇宙戦艦ヤマト』を中学一年生から夢中になって観ていた僕としては、いちヤマトファンとして昔とどう違うんだろうというのが凄く気になっていました。『2199』もそうだったけど、『2202』では元の作品と何が同じで何を変えてくるんだろうと。かつての作品が素晴らしいからこそそれをベースに作られているのは間違いないのでいちいち気にしなくてもいいんですけど、新しいヤマトが生まれてどんどん膨らんでいっている。それぞれの陣営が色んなことを抱えていて、それぞれのキャラクターも深く描いている。出てくる人物がみんなそうですよね。それでいて色んな部分で納得がいくというか。非常に緻密ですよね。そこが少しづつ垣間見えて来るのが第四章になります。
─デスラーの立場や、その心境も気になります。
山寺●そう、デスラーもその一人なんです。これまでの状況やズォーダーの言葉などから何となく今の立場は分かりますが、まだ語られていない部分は想像するしかありません。でも、当然ですけど腹の探り合いなんですよね。もちろん『2199』ではヤマトの乗組員たちとでしたが、今回はガトランティスとデスラー。今、ガミラスは地球と連合を結んでいて、それもヤマトにガミラス人も乗っているという状況…。デスラーの立場は、そもそもオリジナルの『さらば』や『ヤマト2』ともまったく違うんです。
─とすると、第三章のラストでズォーダーに言われた「執念を見せてくれ」という言葉は、ヤマトへ向けたものだけでは終わらないキーワードになるのでしょうか。
山寺●詳しくは言えませんが。オリジナルの作品とは色々違いますから、さらに深いんです。デスラーは何のために…ということです。今のガミラスは地球と連合を結んでいるんだから「個人的な恨みとか言っている場合じゃないじゃん」という見方もある一方、あのヤマトとの戦いは私利私欲ではなくガミラスという国家の為にやっていたものでもある。『2202』の中で、デスラーがどういう思いで何をするのかというのは非常に興味深いですね。
─『2202』で初めてアフレコをする際に、音響監督から「こんな展開になるのでこんな演技を」といった要望はあったのでしょうか?
山寺●それがないんです(笑)。「活躍しますから」という話だけで、台本から読み取るしかない。最近ですよ、福井さんが書かれた部外者にはみせられないような「こういう風になっていくよ」というメモを見せていただいたのは。そこにデスラーに関してのこともあって。そこで初めて色んなことを知りました。早く教えてくれよって話ですよ(笑)。もしかしたらアフレコでちょっとは…いや全然なかったですね。羽原監督は、僕がデビュー当時からお世話になっている方です。『超音戦士ボーグマン』や『天空戦記シュラト』でもお世話になっていますし、同世代でこうやって共に頑張ってきていますから非常に楽しみで、色々お話をしてくれるのかなと思っていたのに、特に何もなく…(笑)。
本当は全てを知っている方が良いのかもしれませんが、どうなんでしょう。でも、台本に書かれているセリフのひとつひとつが腑に落ちるというか、「なるほど」という部分が僕の中ではありました。ですから「そういうことだろうな」と想像して演じていました。この第四章でも良いセリフがたくさんありますよ。
─もし、お気に入りのセリフがあれば教えてください。
山寺●すでに公開になっている「劇場予告編 60秒ver」に使われているセリフですが、「久しぶりだねヤマトの諸君」は、僕も子供の頃に真似していた名台詞です。ここでは冒頭に使われていますが、これが第四章本篇ではどういう状況で言うのか。もちろん古代たちに対峙し言うわけですけど、どういう気持ちで言っているのか、何処でいうのかというのは非常に大切ですね。そこは是非観ていただきたいですね。
「あの艦は何ひとつ変わっていないようだ」も、言っていてニヤリとしてしまうというか、やはりデスラーはいいですね(笑)。自分で言っていて何ですが、こういう台詞を言うのがデスラーですし、魅力的だなって思いますね。久々に出会ったことへの懐かしさ、何ひとつ進歩がない奴等だよなという気持ち。デスラーの心情を色々想像できそうですね。デスラーの一言一言には色んな含みがあって、自分の心を見せるわけではないので、もちろん額面通りではなくその裏に色んなことが…。誰に対して言っているかでも変わりますから、こちらも実際に観ていただければと思います。
─そんなデスラーの側に登場するのがガトランティスのミルですね。
山寺●ミルとの会話は面白いですよ。説明しすぎても良くないので、どこを淡々と言って、どこをニヤリと言いうと効果的かというのは、正直そこまで絵に表情が付いてるわけではないので、音響監督からの支持をいただきつつ色々探りながら演じた感じです。
─「劇場予告編 60秒ver」といえば、デスラー砲を撃っているのにも驚きました。
山寺●いきなりですよね。第三章のラストで急に出てきたと思ったら第四章で撃ちますから、随分早すぎるかなと。それも、デスラー砲ですからもうここで終わっちゃうのかもしれませんね(笑)。残念ですがこのシリーズもここで終わり…。しかし、この先を楽しみにしている方は安心してください作品は続きます。ただタイトルが変わるかもしれません。『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たちを撃ち負かしたデスラー篇』に(笑)。
─長いですね(笑)。
山寺●じゃあ『宇宙戦艦ノイ・デウスーラ』で(笑)。
─PVでは使われていませんが、じつはそのデスラー砲を撃つシーンでお気に入りのカッコイイセリフがあると伺いました。
山寺●本当に良いセリフです。第四章をご覧いただく前にお教えすることはできませんが、どう説明したらいいんでしょう…。一般論として言っているんですが、デスラーにとっては自分自身のことなのかなと受け止められますし、これは誰にでも通じるものだと思います。今の我々にとってもキーワードになるような、それは最も大切だと言えるけど諸刃の剣でもある、全てを失うことになるかもしれない。というようなことを言っています。
デスラーのセリフだけでなく、『2202』で登場するキャラクター同士の関係性も当然今の我々の生活と繋がっています。自分と同じ部分に共感を持っていただくのも良いですし、自分とはまったく重ならない存在でも、見方をちょっとだけ変えれば「そういうことだったんだ」と納得できると思います。小さい頃に道徳の時間で言われた「相手の立場になってみよう」というヤツですよね。「なんでガトランティス人の立場になって考えなくちゃいけなんだよ」と思われるでしょうが、「今回のスタッフはそういうところまで描きたかったのかな」と思っています。野蛮人で感情も持たないとんでもない奴等の集まりと思える人達が実は…。本当は気持ちを寄せてくれているけど腹の内は…とか。それが今回リブートした『2199』から繋がる『2202』という作品の凄さのひとつかなと思います。第四章はかなりそれが出ていますし、第五章はさらにそこから…(笑)。
─最後になりますが、第四章を楽しみにしている、『ヤマト』ファン、デスラーファンへメッセージをお願いします。
山寺●本当にお久しぶりです。デスラーがいよいよ登場し、みなさんに活躍を見て頂くことがができます。もちろんデスラー以外でも『2202』で気になっているキャラクターが沢山いると思います。そんなキャラクターたちに関して今までみなさんが謎だと思った部分が少しずつ紐解かれるのがこの第四章です。また新しい展開も待っています。第四章「天命篇」。是非お手元でお楽しみいただきたいと思います。