5月25日(金)『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第五章「煉獄篇」上映がスタート。新宿ピカデリーにて上映開始を記念した舞台挨拶が行われた。登壇したのは、音響監督の吉田知弘さん、シリーズ構成の福井晴敏さん。予定にはなかったが、監督の羽原信義さんも急遽駆けつけてくれた。
まずは上映初日となる今の気持ちを聞かれ、羽原さんが「冷い目で見られたらどうしようかと思っていたんですが…。満足していただけたましたでしょうか」と来場者のみなさんへ問いかけると、会場には大きな拍手が響き渡った。その後、福井さんは自虐的ともいえる笑いを入れつつ挨拶。「今までの中で、一番酷い終わり方だよね。第二章の時もかなりのものだなと思ったけど、今回はもっと酷い、酷いと言いつつも、第六章の予告を観てもらうと…新しいヤツが出てくるじゃないですか。業界用語で言うところのビルバインが(笑)。ついにヤマトが交代しちゃうのか?どうするんだろうと。これは今まで以上に楽しみが増えたんじゃないでしょうか」。吉田さんからは「本当に長い旅です。第一章からすでに1年。実は昨日第19話のダビングをしたばかりなんですが…あ、言っちゃいけないのか(笑)。ここまでやっと来たかというそれだけで…。やっと都市帝国だよ」と、内部事情をちょっとだけ披露しつつ、長いシリーズもいよいよ後半に入ったことがわかる挨拶をいただいた。
音響監督の吉田さんをお迎えしていることもあり、今回のトークは音楽とキャストのお話がメイン。ここではその一部を紹介しよう。
─第五章で初めて使う曲もかなりありましたね。
吉田:もちろん録音したのはシリーズが始まる前。(宮川)彬良さんに全体の世界観を分かって欲しかったので、後半に必要な曲でも最初に録音する項目に入れ、ここまで寝かせて、熟成させ、腐る前に使おうと。なので「銀河のテーマ」もやっと今回の予告でイントロが使えました。
─例えばこの第五章で初めて使われた、加藤と透子の独房でのシーンの曲は、どのようなオーダーを出されたんでしょうか?
吉田:第一章にも使った、加藤の息子…翼くんを含んだ3人の親子の曲「翼〜消えゆく命〜」に通じる曲であり、加藤がダークサイドに誘われ墜ちてしまう…という説明を彬良さんにしたら、ああいう見事な曲になりました。素晴らしい曲ですよね。
福井:映像を観て合わせたかのようにしか思えない曲を作ってくる。素晴らしいですね。
羽原:もちろん曲を聴いた時は素晴らしいなと思ったんですが、吉田さんの選曲が…。ダビングの時に初めて絵にこの曲がついているのを聴いて、本当にこのシーンを観てから曲を作ったんじゃないかというくらいにピッタリあっているのでビックリしました。
─他にも、まるでフィルムスコアリングしているかのように思えるシーンが多いですね。
吉田:それはもう血の滲むような思いで…。なるべく音楽の流れを無視せず、作曲者や演奏者がもしこの曲を短くするとしたらどう切るのかなと。基本的にはなるべくいじらないで置くようにしたいんです。第五章は、昔の曲と新しい曲のバランスが非常に悩みどころで。その中でどう落としこんでいくのかが大変でした。
福井:吉田さんに聞きたかったんですけど、都市帝国が出てきた時のSE「ガチャコーン」。あれはなんなんですか?(笑)。昔、(オリジナルの『さらば宇宙戦艦ヤマト』を)観た時からずっと気になっていたんですが、あれ何の音なんですかね?
吉田:あれ、なんなんだろう。
福井:原作だと何か点滅して「ガチャコーン」って。あれは都市帝国が音を出している?(笑)。それがあるから今回も「やっぱりこれだ」っていう感じが凄くあるんです。
吉田:あの音も効果の西村さんに「どう使うかは任せるけど、コレあるから渡しとくね」って無責任な投げ方をして(笑)。
羽原:バッチリでした。
─監督は、どう解釈しているんですか?(笑)。
羽原:え〜〜。まあそれは置いといて(笑)。あの一連のシーンはダビングの時に曲を付けていただいて。その時カット変わりが想定していたものとちょっと違う感じになってしまっていたので、逆に音楽の流れに合わせて編集し直しているんです。
吉田:試写で観て感動しました。
─第四章の「みんなで撃つ」シーンで使われた曲が、第五章ではキーマンが囚われた古代たちを解放するシーンに使われていました。吉田さんはこの曲を、みんなの気持ちがひとつにまとまっていくシーンで使うんだと思ったのですが。
吉田:あの場では、格好良いキーマンのテーマですね。実は、あまり考えないようにしているんです。狙うとだいたい外すんでね。
羽原:そこは感性の勝利なんじゃないですかね。
福井:曲が求めるというのもありますよね。あの曲に関しては「俺はキーマンでいきたい」という感じだったんでしょうね。
吉田:ランハルト・デスラーの曲にもなるわけですね。
─第五章の冒頭に登場するデスラー一族の声について伺わせてください。
吉田:シリーズが始まる前、羽原さんから一部「この人はどう?」というリクエストがあって、スケジュールなどの問題がなければ採用ということになりました。あれくらいの短いシーンで存在感を出せる人となると、やっぱりベテランの人たちでないと。
羽原:だって、泣いているだけであれだけ感情が伝わるんですから。
─後半では、地球側にも新キャラクターが二人。こちらのキャストも羽原監督からオファーを?
羽原:藤堂早紀に関してはこちらからオーダーをしまして、市瀬美奈は吉田さんからのお勧めでした。
─アフレコはいかがでしたか?
羽原:高垣彩陽さんと黒沢ともよさんですが、二人とも…「過去はどうだったんですか?」というのも含めて、自分の中に取り入れてから演じたいと言っていただいたので必死に説明しました。
福井:役についてかなり食いついてきましたね。
─そしてこの方も忘れてはいけません。ささきいさおさん。
羽原:アポロノームの安田艦長ですね。インタビューかレコーディングでお話しをさせてもらって、その時「艦長だったらやりたいな」みたいなことを仰っていただいたんです。その時、やった!「ありますよ」みたいな感じで(笑)。
─監督からのアイデアといえば、ガトランティスの赤ん坊(ノルの幼少期)も羽原さんの提案と伺いました。
羽原:そうですね。スタッフの一人がちょうど昨年末頃に出産されたので、ニヤリと(笑)。「アフレコまで3ヶ月くらいあるから、ちょっと泣き声を録っておいて」と。
福井:いいのを録ってきましたよね。
吉田:音質も凄く良くてビックリでした。
羽原:リテイクなしの一発OKでした。ちゃんとオファーもしていますので、ギャラは福井さんがオムツで払っています(笑)。やはり作品の持っている運命というのをかなり感じました。シナリオ上ではガトランティスの赤ちゃんが重要だったので、ありもの(ライブラリー音源)よりはきちんとした声がいいなと思っていたので、凄いラッキーだなと。
福井:このタイミングでね。
羽原:実際に泣き声に合わせて口の動きもなるべく合わせています。
舞台挨拶の最後には来場者によるフォトセッションが行われ、その後登壇されたみなさんからメッセージをいただいた。
吉田知弘(音響監督)
「銀河のテーマ」がこのあとどうなるのか。第六章、そしてラスト第七章へどう繫がっていくのか。最後まで頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
福井晴敏(シリーズ構成)
皆川ゆか姉さんが書かれた小説の第3巻が今日(5/25)から発売となりましたのでこちらもお願いします。プラモデルも、TVの発表が出るのを待っていたこともあり、種々様々年末に向けて出していくことも決まりました。そちらもよろしく。あと、内容は後日になりますがドラマCDがね。これは聞きものなので是非こちらもお楽しみにしていただければと思います。また引続きよろしくお願いします。
羽原信義(監督)
第六章「回生篇」まで半年ほどお待たせしてしまいますけど、必ずみなさんのご期待に沿えるものを作るために一丸となって頑張っております。本日はありがとうございました。
『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第五章「煉獄篇」は、5月25日(金)より全国35館にて期間限定上映。第六章「回生篇」は、11月2日(金)より劇場上映開始。
追記:
羽原監督から、この日「月刊アニメージュ」さんの取材を行なっていたこと、その記事が創刊40周年となる「月刊アニメージュ」2018年7月号(6月9日発売)に掲載されるだけではなく、同号にて「月刊アニメージュ 創刊号」の表紙となった銀色のヤマトと同じ絵柄を『2202』のヤマトでオマージュしたピンナップも掲載されることが発表された。